※本記事は2026年7月31日時点の情報です。公式マニュアルの記載をもとに執筆しています。仕様は変更される可能性があるため、実施前に必ず最新の公式マニュアルを確認してください。なお、コントロールパネルの画面キャプチャは掲載していません。実際の画面表示はご自身の環境でご確認ください。
- この記事でできるようになること
- さくらのクラウド「シンプルAI(Simple AI)」の利用申請(事前審査)を出し、承認後にAPIキーを発行して、curlとOpenAI SDK(Python)で疎通確認できる
- CR版・SLA対象外という前提を踏まえて「どこまでの用途に使ってよいか」を自分で判断できる
- 検証終了後に安全に撤退(APIキー全削除→プロジェクト削除)できる
- 所要時間の目安
- 手を動かす作業: 30分程度(申請フォーム入力〜疎通確認まで)
- 待ち時間: 事前審査に「5営業日程度かかる場合」あり(公式マニュアル記載)。検証スケジュールはここを織り込んで組むこと
- 前提(必要なもの・費用)
- さくらのクラウドのアカウント(契約者メールアドレスに審査結果が届く)
- IAMポリシーを設定できる権限
- 費用: CR版の提供期間中は無償(公式マニュアル記載)。ただしCR版の提供期間がいつまでかはマニュアルに記載なし
前提ボックス: 3つの用語だけ押さえる
- シンプルAIとは: OpenAI互換APIを通して生成AIモデルを使えるさくらのクラウドのサービス。LLMモデルはすべてさくらインターネットがホスティングし、通信は顧客とさくらインターネット間で完結する
- CR版とは: マニュアルには「CR版での提供」とだけ記載があり、定義の説明はない(一般に正式版前の提供段階を指す呼称)。確実に言える条件は「提供期間中は無償」かつ「品質保証(SLA)の適用対象外」という明記事項のみ。稼働率などの品質保証はなく、返金・補償の扱いは約款で要確認。本番システムの前提には置きにくい
- エクストラサービスとは: 利用申請(事前審査)が必要なさくらのクラウドのサービス区分。申し込んで即使えるわけではない
全体フロー(申請〜疎通〜撤退)

- 利用申請(Step 1): エクストラサービスに「シンプルAI」を追加
- 審査待ち(Step 2): 5営業日程度かかる場合あり。結果はメール通知
- IAMポリシー設定(Step 3): 「シンプルAI:シンプルAI管理者」ロールを付与
- APIキー発行(Step 4): キーの表示は一度きり
- 疎通確認(Step 5〜6): curl → OpenAI SDK(Python)
- 検証利用: チャット補完・埋め込み
- 撤退(Step 7): APIキー全削除 → プロジェクト削除
Step 1: 利用申請(エクストラサービスの追加)
シンプルAIはエクストラサービスのため、まず利用申請を行います。手順は公式マニュアル「利用手順」の記載に基づきます。
- さくらのクラウドホームで「さくらのクラウド」を選択する
- コントロールパネル右上の「オプション」を選択する
- 「エクストラサービス」を選択する
- 右上の「追加」ボタンをクリックする
- サービス一覧から「シンプルAI」を選択する
- 「エクストラサービス追加」画面で必要事項を入力する
- 「作成」ボタンをクリックする
なお、申請時の入力項目の詳細(利用目的の記載粒度など)はマニュアルに具体の記載がないため、実際の画面に従ってください(マニュアル未記載・要確認)。
Step 2: 審査結果を待つ(リードタイムに注意)
- 審査には「5営業日程度かかる場合」があると公式マニュアルに明記されています
- 審査結果はメールで契約者に通知されます
- 利用可能になると、コントロールパネル左側メニューに「シンプルAI」が追加されます
Step 3: IAMポリシーの設定
承認後、シンプルAIを操作するユーザにロールを付与します。
- さくらのクラウドホーム左側メニューで「IAMポリシー」を選択する
- 右上の「アクセス権の付与」ボタンをクリックする
- 「アクセス権の付与」ページでプリンシパル名として対象ユーザを設定する
- 「シンプルAI:シンプルAI管理者」ロールを設定する
- 「ロールを追加する」ボタンをクリックする
- 「作成」ボタンをクリックする
Step 4: APIキーの発行(表示は一度きり)
- さくらのクラウドホームで「さくらのクラウド」を選択する
- コントロールパネル左側で「シンプルAI」>「APIキー」を選択する
- 右上の「+作成」ボタンをクリックする
- 「APIキー追加」画面で必要事項を入力する
- 「作成」ボタンをクリックする
- 確認ポップアップで「追加」ボタンをクリックする
- 表示されたAPIキーを「クリップボードにコピー」し、シークレット管理の仕組み(環境変数・シークレットマネージャなど)に保存する
重要: 「APIキーは再度表示されません」と公式マニュアルに明記されています。 コピーし損ねた場合は、そのキーを削除して再発行することになります(再表示の手段はマニュアルに記載なし)。
なお、APIキーとさくらのクラウドの「プロジェクト」の紐付き(どのプロジェクト配下にキーが作られるか)の詳細はマニュアルの利用手順ページに明示がありません。撤退時の制約(後述)から、キーはプロジェクトに属する構造と読み取れますが、画面上の表示は実機で確認してください(マニュアル未記載・要確認)。
Step 5: curlで疎通確認する
公式マニュアルに掲載されているcurlコマンドがそのまま疎通確認に使えます。エンドポイントと提供モデルは以下です(2026年7月31日時点)。
- ベースURL:
https://simpleai.is1.api.sacloud.jp
| 種別 | モデル名 | エンドポイント |
|---|---|---|
| チャットモデル | gpt-oss-120b | /v1/chat/completions(従来のチャットAPI)、/v1/responses(機能が統合されたエージェント的なAPI) |
| 埋め込みモデル | multilingual-e5-large | /v1/embeddings |
- モデルのライセンスは「提供するモデルのライセンス表示」を参照するようマニュアルに案内があります。商用検証の前に確認してください
- OpenAI互換APIで一般的な
/v1/models(モデル一覧取得)の提供有無はマニュアルに記載がありません(マニュアル未記載・要確認)
チャットモデル(gpt-oss-120b)の疎通確認(公式マニュアル掲載のコマンド):
curl https://simpleai.is1.api.sacloud.jp/v1/chat/completions \
-H "Content-Type: application/json" \
-H "Authorization: Bearer <Token>" \
-d '{
"model": "gpt-oss-120b",
"messages": [
{
"role": "developer",
"content": "You are a helpful assistant."
},
{
"role": "user",
"content": "Hello!"
}
]
}'
埋め込みモデル(multilingual-e5-large)の疎通確認(公式マニュアル掲載のコマンド):
curl https://simpleai.is1.api.sacloud.jp/v1/embeddings \
-H "Content-Type: application/json" \
-H "Authorization: Bearer <Token>" \
-d '{
"model": "multilingual-e5-large",
"input": "こんにちは",
"encoding_format": "float"
}'
<Token> の部分をStep 4で保存したAPIキーに置き換えて実行します。JSONのレスポンスが返れば疎通成功です。
Step 6: OpenAI SDK(Python)で疎通確認する
公式マニュアルに掲載されているコード例はcurlのみで、Python/OpenAI SDKのコード例はマニュアルに掲載されていません。以下はマニュアル記載のベースURL・モデル名と、OpenAI互換APIの一般的な接続方法から筆者が構成したコードです(マニュアル未記載・動作確認が必要)。
# pip install openai
import os
from openai import OpenAI
client = OpenAI(
api_key=os.environ["SAKURA_SIMPLE_AI_API_KEY"], # Step 4で発行したAPIキー
base_url="https://simpleai.is1.api.sacloud.jp/v1", # ベースURLはマニュアル記載。/v1の付与は要動作確認
)
response = client.chat.completions.create(
model="gpt-oss-120b", # マニュアル記載のチャットモデル
messages=[
{"role": "developer", "content": "You are a helpful assistant."},
{"role": "user", "content": "こんにちは。自己紹介してください。"},
],
)
print(response.choices[0].message.content)
Step 7: 撤退手順(必ず「キー全削除→プロジェクト削除」の順)
検証を終えたら、次の順序で撤退します。順序を誤るとプロジェクトが削除できません(詳細は「詰まりポイント」参照)。
- コントロールパネルの「シンプルAI」>「APIキー」で、発行したAPIキーの詳細画面を開く
- 右上の「APIキーを削除」ボタンをクリックする(発行したすべてのキーについて繰り返す)
- すべてのAPIキーが消えたことを一覧で確認する
- その後、プロジェクトの削除など通常の撤退作業を行う
参考: 提供モデルの公開情報から分かること
シンプルAIのマニュアルにはモデル名しか記載がありませんが、提供されている2モデルはいずれも重み公開モデルであり、開発元の一次情報(モデルカード・論文)が存在します。以下はモデル一般の公開情報であり、シンプルAI上での性能・設定(量子化の有無、コンテキスト長の上限、推論パラメータの対応範囲など)を保証するものではありませんが、用途判断の参考になります。
gpt-oss-120b(チャットモデル)
- OpenAIが2025年8月に公開したオープンウェイトモデル。ライセンスはApache 2.0(商用利用可)
- MoE構成で総パラメータ約117B、トークンあたりアクティブ約5.1B。モデルカード論文でのコンテキスト長は131,072トークン
- モデルカード論文の公表値(reasoning effort=high): MMLU 90.0%、GPQA Diamond 80.1%(ツールなし)、多言語評価MMMLUの日本語 83.5%
- 注意点(いずれも開発元の公表情報): harmonyレスポンスフォーマットでの利用が前提とされている。また、SimpleQA評価でのハルシネーション率78.2%という数値が論文に報告されており、事実性が重要な用途では検索(RAG)や人手確認との併用が前提になる
- シンプルAI上で未確認のこと: reasoning effortの指定可否、コンテキスト長の上限、内部のフォーマット処理(マニュアル記載なし)
multilingual-e5-large(埋め込みモデル)
- Microsoftの研究者らが2023年に公開した多言語埋め込みモデル。ライセンスはMIT(商用利用可)。埋め込み次元1024、約100言語対応
- 多言語検索ベンチマークMr. TyDiの公表値: 平均MRR@10 70.5、日本語 62.5(参考: 同条件のBM25は21.7)
- 最大入力は512トークンで、超過分は切り捨て(モデルカード明記)。長文はチャンク分割が前提
- プレフィックス必須(モデルカード明記): 検索用途ではクエリに
query:、文書にpassage:を付けて埋め込む設計。なお、シンプルAIのマニュアル掲載のcurl例("input": "こんにちは")にプレフィックスはなく、API側で自動付与されるかの記載もありません。モデル本来の性能を出すには、利用者側でプレフィックスを付けて送るのが安全というのが筆者の判断です(シンプルAI側の仕様は要確認) - コサイン類似度が0.7〜1.0付近に集中するのは学習方式(低温度の対照学習)による想定内の挙動とされ、スコアの絶対値ではなく相対順位で判断すべき
詰まりポイント3つ
1. 事前審査のリードタイムを見込んでいない
エクストラサービスの審査は「5営業日程度かかる場合」があります。「今日申し込んで今日試す」はできない前提でスケジュールを組んでください。デモや検証日程が決まっているなら、1週間以上前に申請しておくのが安全です。
2. CR版のまま本番システムに組み込んでしまう
CR版は無償ですがSLA適用対象外で、出力情報についても一切の保証がなされません。また、CR版の提供期間(いつまで無償か・正式版移行時にどうなるか)はマニュアルに記載がありません。無償だからと本番導線に組み込むと、提供条件の変更時に巻き込まれます。本番利用の判断基準は後述の「業務利用のライン引き」を参照してください。
3. APIキーの削除忘れでプロジェクトが削除できない
公式マニュアルに「プロジェクト削除時は事前にすべてのAPIキーを削除」する必要がある旨が明記されています。検証用プロジェクトを畳むときにAPIキーが残っていると削除がブロックされます。撤退はStep 7の順序で実施してください。
復旧・ロールバック
- APIキーを漏洩させた/コピーし損ねた場合: 該当キーを削除し、新しいキーを発行し直す。キーの再表示はできない(「APIキーは再度表示されません」)ため、削除→再発行が基本動作
- 検証を中断・撤退する場合: アプリケーション側からシンプルAIの接続設定を除去したうえで、Step 7の手順(キー全削除→プロジェクト削除)を実施
- 申請が承認されなかった場合の再申請手順: マニュアルに記載なし。サポートへの問い合わせで確認してください
- エクストラサービス自体の解約(シンプルAIの利用をやめる)手順: 利用手順ページに明示の記載なし(マニュアル未記載・要確認)
業務利用のライン引き
「無償のOpenAI互換API」という響きだけで判断せず、マニュアルで確認できる事実からラインを引きます。
| 観点 | マニュアルで確認できたこと | マニュアルに記載がないこと |
|---|---|---|
| 料金 | CR版の提供期間中は無償 | 提供期間・終了時期・終了時の扱い |
| 品質保証 | SLA適用対象外 | 稼働率の実績・メンテナンス頻度 |
| データの扱い | 入力情報の不利用・第三者不提供・AI学習に不使用 | データ保存の有無・保存期間 |
| 通信経路 | 顧客とさくら間で完結 | データセンター所在リージョンの明示 |
| 出力 | 利用者が自由に使用可(モデルの使用許諾条項の範囲内)。ただし無保証 | — |
| 性能 | — | レートリミット・同時接続数・トークン上限 |
| 禁止事項 | 約款第9条の禁止行為が適用 | — |
このうえで、次のように整理できます。
- 検証・社内利用: OKと判断しやすい。入力の学習利用なし・第三者提供なし・通信が顧客とさくら間で完結という条件が明記されているため。無償なのでコスト稟議も不要
- 本番組み込み: 慎重に。SLAなし・出力無保証・CR版の期間未公表・レートリミット未公表という条件が重なるため。組み込むなら「止まっても業務が止まらない」補助的な位置づけに限定し、約款(特に第9条)を確認したうえで判断する
さくら接続ポイント: シンプルAIの次はどこへつなぐか
さくらインターネットの生成AI関連サービスは、おおまかに次の段階で捉えると導線が引きやすくなります(この段階整理は筆者による位置づけの整理です)。

- シンプルAI: 無償(CR版期間中)で試せるOpenAI互換API。検証の入口
- さくらのAI Engine: 従量課金で、RAGや音声系など、より広い機能を持つAI API群
- 高火力シリーズ: GPUを専有して自前でモデルを動かす段階
ただし、シンプルAIとAI Engineの公式な使い分け指針は現時点で公表されていません。両者はOpenAI互換APIという点で重なるため、「無償検証はシンプルAI、機能・本番前提の検証はAI Engine」という上記の整理はあくまで筆者の見立てです。採用判断の際は各サービスの最新の提供条件を公式情報で確認してください。
次にやること
- 埋め込みAPIで小さなRAGを組む: multilingual-e5-largeで手元ドキュメントをベクトル化し(モデルカードに従い
query:/passage:プレフィックスを付与)、gpt-oss-120bと組み合わせた検索拡張の最小構成を試す - レートリミットと応答性能を実測する: マニュアルに記載がないため、検証スクリプトで応答時間・連続リクエスト時の挙動を計測し、用途判断の材料にする
- /v1/responsesエンドポイントを試す: 「機能が統合されたエージェント的なAPI」とだけ記載されている新系統のAPIを実際に叩き、/v1/chat/completionsとの違いを確認する
本記事執筆時点で未確認の事項(まとめ)
公式マニュアル(2026年7月31日閲覧)に記載がなく、実測またはサポート問い合わせで確認が必要な事項の一覧です。
- 申請フォームの入力項目の詳細(利用目的の記載粒度)
- APIキーとプロジェクトの紐付きの画面上の見え方
- Python SDKでの
base_url(/v1付与)の正否 /v1/models(モデル一覧API)の提供有無- CR版の提供期間・終了時の扱い
- レートリミット・同時接続数・トークン上限
- 審査否認時の再申請手順、エクストラサービス自体の解約手順
- データセンター所在リージョンの明示、データ保存の有無・保存期間
- 埋め込みAPIでの
query:/passage:プレフィックスの自動付与の有無 - gpt-oss-120bのreasoning effort指定可否・コンテキスト長の上限
参考リンク
本記事の手順・サービス仕様は、以下のさくらインターネット公式マニュアル(いずれも2026年7月31日閲覧)を根拠にしています。
- シンプルAI サービス基本情報 — サービス概要・CR版/無償・SLA対象外・データの取り扱い・エクストラサービス・プロジェクト削除時の注意
- シンプルAI 利用手順 — 申請手順・審査期間・IAMポリシー設定・APIキー発行/削除手順・curlコード例
- シンプルAI 操作ガイド — 提供モデル(gpt-oss-120b / multilingual-e5-large)・ベースURL・エンドポイント一覧
- さくらのクラウド APIポータル — 2026年7月31日にブラウザで確認。ポータルにはAI Engine Inference API / AI Engine RAG APIなどのリファレンスが掲載されている一方、シンプルAI専用のAPIリファレンスは掲載されていない。シンプルAIのAPI仕様はマニュアルのcurl例とOpenAI互換仕様に依拠することになる
「提供モデルの公開情報」セクションは、以下の開発元一次情報(いずれも2026年7月31日閲覧)を根拠にしています。
- openai/gpt-oss-120b(Hugging Faceモデルカード) — 総/アクティブパラメータ・ライセンス・MXFP4量子化
- gpt-ossモデルカード論文(arXiv:2508.10925) — ベンチマーク値・コンテキスト長・MMMLU日本語・ハルシネーション率
- openai/gpt-oss(GitHub) — Apache 2.0・harmonyフォーマット前提・reasoning effort
- intfloat/multilingual-e5-large(Hugging Faceモデルカード) — 次元数・512トークン制限・プレフィックス仕様・Mr. TyDi値・MITライセンス
- Multilingual E5技術レポート(arXiv:2402.05672) — 学習方法・MIRACL/MTEB値


